駐日フランス大使 ザビエ・ドーフレーヌ・ド・ラ・シュバルリー


Xavier de la Chevalerie, 1972
Xavier de la Chevalerie, 1972

バロン・ルヌアールは日本の美術愛好者の間ですでによく知られていると思います。東郷青児美術館で開催される展覧会は過去日本で行われた10の個展等の成果を集積したものといえます。

バロン・ルヌアールは作品を通じて、自らの主張に忠実です。職人気質をいつも忘れず、そのたゆ まぬ努力の結果、「職人親方」にふさわしい地位に達しています。

しかもその職人気質すら自由表現の前にかげが薄くなっています。自由表現こそは彼の作品の特色そのもので、個性的です。

きして重要でないディテールで、彼のビジョンの焦点がかき消されることがありません。パイロットだった頃、上空から地球の生態を観察し、それに雲の舞うあい聞に、蔭から光が飛び出すのをみたからにほかありません。

それで動きのある油絵を描きました。たくましい創作力で、天地創造主がこの駐をつくりあげるまでの混沌を思わせる音楽的リズムで表わしています。素材の中で原色を透明に感じとらせます。郷里のブルターニュと共に、第二の故郷である日本の風景を描きました。

バロン・ルヌアールは「自然主義的な空想的抽象派」の元祖とみられ、その明るい色彩はモネの作風とセザンヌの意図的構図の中間に位置すると思います。

血筋をたどるなら祖父の版画家ポール・ルヌアールからソフトな線と鮮やかなエレガンスを受け継 いでいます。車両鞍する線を通じて、彼の絵画は沈黙地帯ともいうべき眠想と詩情のスペースをあけた、創作力を思う存分発揮しています。かくて東京国立博物館の所蔵品となった約200点のデッサ ンや版画よりなる祖父の作品と共に、バロン・ルヌアールは日仏文化交流の架橋になるだろうと思います。

駐日フランス大使
ザビエ・ドーフレーヌ・ド・ラ・シュバルリー

Musée Seiji Togo, Tokyo, Baron-Renouard
Musée Seiji Togo, Tokyo, 19

Notes et références :
Objet : Préface
Auteur : Xavier Daufresne de la Chevalerie, ambassadeur de France au Japon
Exposition : rétrospective de Baron-Renouard
Lieu : Musée Seiji Togo, Tokyo, Japon
Date : 1981